料理人はSNSを頑張りすぎ?

日記

料理人はSNS発信を「頑張りすぎる」べきなのか?料理人としての葛藤と本質

「料理人はSNS発信を頑張らないといけないのか?」この問いを、僕はここ最近ずっと自問自答しています。もちろん、現代のデジタル社会において、事業者としてSNSが強力なツールであることは百も承知です。集客、ブランディング、顧客とのコミュニケーション――その恩恵は計り知れません。しかし、率直に言って、どうも世の中の「SNS頑張りすぎ」感には、拭いきれない違和感があります。

本来の「料理人」の姿とは何か?

僕たちの仕事は、突き詰めて言えば「美味しい料理を作り、お客様に心から喜んでいただくこと」です。シンプルですが、これこそが料理人としての存在意義であり、使命だと思います。食材を選び、調理法を研究し、一皿一皿に心を込める。そして、お客様が「美味しい」と笑顔になる瞬間を目にする。この循環こそが、私たち料理人の最大の喜びであり、原動力です。

しかし、SNS発信に注力しすぎると、この「本質」から目を逸らしてしまうのではないかという危機感を覚えることがあります。例えば、料理の写真を撮るためにベストなアングルを探したり、ハッシュタグを吟味したり、インサイト分析に時間を費やしたり。これらの作業は確かにマーケティングの一環ですが、その時間が、本当に料理の質を高めることに繋がっているのか、疑問符がつく時があります。

オーナーシェフとしての多忙な日々の中で

これからオーナーシェフとして自分の店を持つ僕にとって、業務は調理だけではありません。仕入れ、メニュー開発、集客戦略の立案、日々の会計業務、設備のメンテナンス……。果てしないタスクが山積しています。その中で、私は可能な限り「料理に集中できる環境」をつくり出したいと思っています。

例えば、旬の食材を求めて早朝から市場へ足を運んだり、新しい調理法を試作するために何時間も厨房にこもったりする時間は、僕にとって何物にも代えがたい「創造の時間」です。お客様の声に耳を傾け、直接「美味しかったよ」という言葉をいただく瞬間は、SNSの「いいね」では決して得られない、生きた手応えです。これらこそが、料理人としての感性を磨き、新たな発想を生み出す源泉なのです。

もし、これらの貴重な時間を削ってまで、SNSの投稿頻度を上げたり、トレンドに合わせた「映える」コンテンツ作りに躍起になったりすることが、本当に店の発展に繋がるのか。僕は、そこに冷静な視点を持つ必要があると考えています。

「頑張る」のではなく「賢く活用する」視点

もちろん、SNSを全く活用しないという選択肢は、現代において非現実的でしょう。情報過多の時代に、お店の存在を知ってもらい、魅力を伝えるためには、デジタルでの発信力は不可欠です。しかし、重要なのはその「使い方」ではないでしょうか。

SNSは、あくまで料理という「本質」を伝えるための「手段」であるべきです。「バズる」ことや「フォロワー数」を増やすこと自体が目的になってしまうと、私たちは道を誤ってしまうかもしれません。

例えば、SNSでは伝えきれない料理のこだわりや、生産者さんの想いをブログで深掘りしたり、忙しい中でもお客様とのコミュニケーションを大切にしたり。あるいは、SNS運用のプロの力を借りて効率化を図るなど、限られた時間を最大限に有効活用する方法はたくさんあります。

私たちの目指すべきゴールは、SNS上での数字の伸びではなく、「お客様の心と胃袋を満たし、笑顔で帰っていただけること」です。そして、その笑顔がまた次のお客様を呼び、お店が長く愛される存在になること。

SNS発信に「頑張りすぎる」のではなく、「賢く活用する」という視点を持つこと。そして何よりも、料理人としての「本質」を見失わないこと。このバランスこそが、これからのオーナーシェフに求められる資質だと、私は深く考えています。いかに料理に集中できる時間を確保しつつ、デジタルツールを効果的に取り入れていくか。この挑戦こそが、CASA Kを唯一無二の存在にする鍵だと信じています。

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