オーナーシェフか、雇われシェフか?あなたの料理人人生、どちらを選ぶ?
料理人としてのキャリアを歩む中で、多くの人が一度は突き当たる大きな選択。「自分のお店を持つオーナーシェフになるか、それともどこかの組織で腕を振るう雇われシェフとして生きるか」。これは単なる働き方の違いではなく、料理人としての生き方そのものに関わる、深く悩ましいテーマですよね。
私自身も長年この問いと向き合い、悩み続けてきました。この記事では、これから開業を考えている皆さんに向けて、それぞれの道が持つメリットとデメリットを徹底的に掘り下げて解説します。あなたの料理人人生の羅針盤となるような情報になれば幸いです。
オーナーシェフという生き方:夢と現実の狭間で
自分のお店を持ち、自分の理想の料理を追求する。多くの料理人が抱く夢、それがオーナーシェフです。
オーナーシェフのメリット
- 完全なる自己表現の場: 自分の店なので、メニュー、内装、サービス、全てを自分の理想通りに作り上げることができます。食材の仕入れから盛り付け、お客様への提供まで、こだわりを徹底的に追求できるのは最大の魅力でしょう。
- 経営の自由と裁量: 営業時間、定休日、価格設定など、経営に関わる全てを自分で決定できます。これにより、自分のライフスタイルや客層に合わせた柔軟な運営が可能です。
- 売上・利益が直接自分に: 努力が直接売上や利益に繋がり、それが自分の収入となります。お店が繁盛すればするほど、経済的なリターンも大きくなる可能性があります。
- お客様とのダイレクトな関係: 自分の名前でお客様と向き合い、直接感謝の言葉を受け取れる喜びは格別です。お客様の笑顔や「美味しかった」の一言が、日々の大きなモチベーションになります。
- 地域への貢献と存在感: 地域に根ざしたお店として、地元のお客様に愛され、コミュニティの一部となることができます。
オーナーシェフのデメリット
- 計り知れない経営リスク: 資金調達、店舗選び、集客、人材育成、日々の運営コストなど、全てのリスクを背負うことになります。失敗すれば、多額の借金を抱える可能性もあります。
- 料理以外の業務に追われる日々: 料理を作るだけでなく、経理、税務、労務管理、衛生管理、広報活動など、多岐にわたる経営業務をこなす必要があります。料理に集中する時間が減ってしまうことも少なくありません。
- 長時間労働と精神的プレッシャー: 営業時間外の仕込みや片付け、事務作業などで、労働時間は長時間になりがちです。売上目標や人材の問題など、精神的なプレッシャーも常に付きまといます。
- 全て自己責任: 良いことも悪いことも、全てが自分の責任です。何か問題が起これば、全て自分で解決しなければなりません。
- プライベートとのバランスの難しさ: 開業当初は特に、プライベートの時間が極端に少なくなる覚悟が必要です。家族との時間や趣味の時間を犠牲にすることも出てくるでしょう。
雇われシェフという生き方:安定と研鑽の道
どこかの飲食店に所属し、その一員として料理の腕を磨くのが雇われシェフです。
雇われシェフのメリット
- 経済的な安定と保障: 固定給が支払われるため、毎月安定した収入が見込めます。社会保険や福利厚生が整っている職場であれば、安心して働くことができます。
- 料理に集中できる環境: 経営に関わる業務は基本的に会社が担ってくれるため、あなたは料理の技術向上や新しいメニュー開発に集中することができます。
- 多様な経験と学び: 様々なコンセプトの店や、異なるスタイルのシェフのもとで働くことで、幅広い料理の知識や技術、経営ノウハウを吸収できます。特に若いうちは、多くの店で経験を積むことが財産になります。
- 経営リスクを負わない: お店の経営不振や倒産といったリスクは、会社が負うため、個人的な金銭的リスクはほとんどありません。
- プライベートとの両立のしやすさ: 決められた労働時間の中で働くため、プライベートの時間を確保しやすい傾向にあります。
雇われシェフのデメリット
- 自己表現の限界: 会社のコンセプトや上司の意向に沿って料理を提供するため、自分の理想を全て実現することは難しいかもしれません。
- 収入の上限がある: どんなに努力しても、給与体系は会社の規定に準じるため、売上に貢献してもそれが直接収入に反映されるとは限りません。
- 人間関係の悩み: 職場の人間関係や上司との相性が、仕事のモチベーションに大きく影響することがあります。
- 昇進・昇給の難しさ: 会社や組織の規模によっては、昇進や昇給の機会が限られている場合もあります。
- 指示命令系統の中での働き方: 自分の意見が通りにくい、理不尽な指示に従わなければならないなど、組織特有のストレスを感じることもあります。
あなたはどちらの道を選ぶべきか?
オーナーシェフと雇われシェフ、どちらの道にも一長一短があります。どちらを選ぶかは、あなたの何を重視するかによって変わってきます。
- 「自分の理想を形にしたい」「全てを自分でコントロールしたい」という強い情熱と覚悟があるなら、オーナーシェフの道があなたを待っています。ただし、料理の腕前だけでなく、経営者としての資質や覚悟が不可欠です。
- **「まずは料理の技術を徹底的に磨きたい」「安定した環境で経験を積みたい」**と考えるなら、雇われシェフとして様々な経験を積むのが賢明です。そこで得た知識や人脈は、将来独立する際の大きな財産となるでしょう。
大切なのは、それぞれの道を深く理解し、自分自身の価値観と照らし合わせることです。
まとめ
オーナーシェフも雇われシェフも、料理人としての尊い生き方です。どちらが良い、悪いというものではありません。
これから開業を考えている皆さんには、焦らず、自分の心としっかり向き合って、どちらの道が今の自分にとって最適なのかを見極めてほしいと思います。
もしかしたら、まずは雇われシェフとして経験を積み、その後に独立するという道を選ぶ方もいるでしょう。それは決して遠回りではありません。むしろ、将来のオーナーシェフとしての成功に繋がる、貴重なプロセスになるはずです。
あなたの料理人人生が、輝かしいものになることを心から願っています。
絶対にやってはいけない飲食店の法則25 [ 須田光彦 ]
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